生産者インタビュー 久留米市ブサイク豆腐
大正2年創業隠れた名店の看板商品「ブサイク豆腐」
大正2年創業という久留米市田主丸町の老舗「行徳謙吾商店」は、地元で愛される豆腐とこんにゃくを製造販売している。看板商品は「ブサイク豆腐」。10年以上愛され続ける看板商品で4代目店主の行徳征剛さんが開発した自信作だ。
豆腐屋の朝は早く、毎朝3時に起床し美味しい豆腐を丹精込めて作っている。
こだわりは大豆の風味が残る昔ながらの素朴な味だ。
継ぐ気がなかった家業
豆腐屋の息子として生を受けたが、稼業を継ぐ気はまったくなかった。母親からは「継がなくていい」と言われてもいた。大学を出て行員となったが、30代半ばで稼業を継ごうと決心し退職をした。
年齢を重ねて地元に目をむけるようになり、店を継ぐことで生まれた町に貢献できるのではないかと考えたからだ。
上司には「本当にいいのか?」と、引き留められ、同僚には「継ぐものがある奴はいいな」と言われた。
色んな思いの中、最初に決めたのが「辞めた時の給料から絶対に下回らないこと」というルールであり目標だった。
小さな町の豆腐屋で、その目標が厳しいのは分かっていた。それでも、丁寧に選び抜いた素材とこだわりの製法で「美味しいと言ってもらえるものをつくる」ことに情熱を注ぐ毎日を繰り返した。口伝えに”美味しい豆腐があるよ”と評判になり、販路が広がったと振り返る。
今では、道の駅くるめの他に大型スーパーにも搬入するなどファンを増やした。
「人の縁というのは有難いね」と、目を細める。
小学生にものづくりの大切さを
「子どもたちにものづくりの大切さを伝えたい」という思いから、13年前から近くの小学生に豆腐づくりの現場を見てもらう見学会を年に一度実施している。
店の作業場に来てもらい豆腐がどうやって作られているのかを知ってもらうのが目的だ。店頭にならんだ商品しか知らない現代の子どもには貴重な体験の時間となっている。
取材当日、定休日の午前と午後に分かれて近くの小学3年生の児童ら約60人が訪れた。
子どもらは、水に浸しただけの大豆、火を通してふっくらした大豆、そして豆腐に欠かせないニガリなどを少しずつ味見をしては感想を言い合うなどとても賑やかだ。
機械から湯気が上がり温かい搾りたての「豆乳」を見るのも初めて。多くの子どもは、小分けのパックに流し込んで固まるものだと思っている。
「これがどうやってお豆腐になるの?」と、目をキラキラと輝かせて覗き込む子供たちの表情を見るのも行徳さんにとっての楽しみだという。
今の子供たちは、自分の子ども時代と比べ想像力が低下していると感じる。こういったものづくりを見て・触れて・感じることで、少しでも刺激となり、将来の夢や目指す仕事に良い影響になれば嬉しいと話してくれた。
行徳謙吾商店
住所:福岡県久留米市田主丸町田主丸296-1
豆腐とこんにゃくの製造が主。大豆の香りと味がしっかりとある昔ながらの豆腐に、今は少なくなったという芋から擦り下ろす手作りこんにゃくが人気だ。おからを使った総菜やかりんとうなども定評があるおススメ店。
道の駅くるめでも購入できる。
看板商品はブサイク豆腐
あばたのような凹凸があるのでそう命名したという4代目オリジナル商品。
表面には湯葉が張り、その下にはしっとりとした舌ざわりに大豆の風味と甘みがしっかりと感じられる。絶妙なタイミングでパック容器に移すため、程度な水分を残したままなので絶妙な食感が保たれている。大豆のうま味をしっかりと味わえる豆腐だ。
筆者のおススメは、まずは何もつけずに一口。
二口目はぜひ、塩で食べてみてほしい。もちろん醤油でも美味しいが、大豆の風味を楽しめる。
夏は冷やしたままで、冬は容器に移してレンジで温めると優しい大豆の香りが立ってより食欲をそそる。
今や珍しい手作りこんにゃく
市販されているこんにゃくの多くは、粉状の「こんにゃく」を使うのが支流だというが、行徳製造のこんにゃくは、生芋を擦りおろすところから始めるといい、父親の代から使っているという機会で練っていく。そうすることで、おどろくほど良い食感となるだけでなく、小さな気泡がたくさん入ったこんにゃくとなり味が良くしみこむそうだ。
煮物には最高で、味が染みるのも早いため煮込む時間も通常のものの半分程度で良いのだとか。
とっても堅いけどとっても旨い”かりんとう”
おからやヒジキ、ゴマが入った手作り” かりんとう”もおすすめ。しっかりと堅めなのがクセになり、一度食べ始めると止められなくなる。こちらもしっかり大豆の風味が残り、ゴマが香ばしく栄養価のあるおやつとして人気だ。シンプルなものほど美味しいなと感じる一品だ。