石橋文化センター
全国区のメーカーの本社所在地や創業地である、ゴム産業の街・久留米。
その筆頭、世界的タイヤメーカーのブリヂストンもこの街で生まれた。
創業者が久留米に贈った財産とも言うべき文化施設から、その足跡に迫ってみよう。
ブリヂストン創業者が故郷に咲かせた文化の花
日本で初めて国産自動車タイヤを開発し、今や世界トップクラスのタイヤメーカーとしてその名を馳せるブリヂストン。創業者の石橋正二郎は、大正7年(1918年)に兄と共に生まれ育った久留米で日本足袋株式会社(現在のアサヒシューズ)を設立。地下足袋やゴム靴製造で成功を収めた後、数々の苦労を乗り越え、昭和5年(1930年)に同じく久留米の地で自動車タイヤ国産化という偉業を成し遂げた。名字の石橋を英語にし(ストーン、ブリッヂ)、ひっくり返したのが社名の由来というのは有名な話だ。
久留米市美術館を中核とする『石橋文化センター』は、昭和31年(1956年)に正二郎が建設し、久留米市に寄贈した施設。戦後、荒廃した生まれ故郷の姿を憂えた彼の、芸術、音楽、健全なスポーツなどに触れ合える場をとの思いが込められている。競技用プールやテニスコート、遊園地があった時代を経て、現在は美術館のほかに図書館や音楽ホールなどがある文化発信基地として、長年市民に親しまれている。
若い頃から芸術への関心が高かった正二郎は絵画収集にも熱心で、その最たるものに久留米市出身の画家、青木繁の作品群がある。そのほかにも日本の絵画史において重要な作品が数多くあり「石橋正二郎記念館」では、石橋財団コレクションのごく一部を定期的に入れ替え展示している。
絵画収集のきっかけになったのが、同じく久留米市出身の画家、坂本繁二郎の存在。坂本が久留米で代用教員をしていた時代に正二郎が教え子だったという縁があり、青木の死後に親友であった坂本が、散逸を防ぐ為に彼の作品を買い集め美術館を設立して欲しいと正二郎に願ったという。久留米での2人の出会いが、日本を代表する絵画コレクション形成へとつながったというドラマは非常に感慨深い。なお文化センター敷地内には、八女市にあった坂本繁二郎のアトリエも移築保存されている。
日本有数の実業家である石橋正二郎がライフワークとした文化活動。その一端が、四季折々の花が咲き誇るこの場所で花開いている。
石橋文化センター
福岡県久留米市中町1015
☎0942-33-2271
料金 無料
営業時間 9:00〜17:00(5月〜9月は19:00まで延長)
定休日 園内年中無休
https://www.ishibashi-bunka.jp/
久留米市美術館・石橋正二郎記念館
福岡県久留米市中町1015
☎0942-39-1131
料金 一般、シニア、大学生有料、高校生以下無料
※料金は展覧会毎に設定、記念館は大学生以上300円
営業時間 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日 月曜日(祝日の場合は開館)、年末年始、展示替休館