ONE PIECE×清和文楽 超馴鹿船出冬桜

熊本復興プロジェクト 「超馴鹿船出冬桜」、只今上演

熊本地震から8年。被災地は復興の歩みを止めない。超人気漫画「ONE PIECE」の原作者尾田栄一郎氏も被災した故郷のため、「ONE PIECE熊本復興プロジェクト」を展開。その一つが農村文楽の清和文楽とのコラボだ。2022年11月に特別公演した作品をリメイクし、今年春から定期上演へ。その名も「超馴鹿船出冬桜(ちょっぱあふなでのふゆざくら)」。夏の定期公演が7月20日から始まっている。

ONE PIECE×清和文楽 超馴鹿船出冬桜
ONE PIECE×清和文楽 超馴鹿船出冬桜

九州唯一の浄瑠璃専用劇場
清和文楽館で文楽を知る

熊本県の道の駅清和文楽邑に隣接する「清和文楽館」は、九州唯一の人形浄瑠璃専用の劇場だ。農村文楽とは農村の娯楽として農民たちが人形浄瑠璃を演じ、観賞した伝統芸能。かつては熊本県のみならず、各地で農閑期に人形浄瑠璃が演じられていたという。清和文楽は江戸時代の末期、淡路島から来た文楽一座に魅せられ、人形を買い受けて人形遣いを習ったのが始まりと言われている。
しかし、やがて若手後継者不在などで各地の芝居小屋が消え、衰退していった。旧清和村も一時期は衰退したが、昭和に入って復興し、保存会が継承を絶やさなかった。1992年に清和文楽館が完成し、年間170回以上の定期公演を行う一方、若手の育成にも力を入れ、本場・淡路島での修業などを奨励している。また、館内は劇場の他に資料館を備え、清和文楽の歴史と文化を伝えている。

ONE PIECE×清和文楽 超馴鹿船出冬桜

ONE PIECE×清和文楽 超馴鹿船出冬桜
ONE PIECE×清和文楽 超馴鹿船出冬桜

人形と三味線、太夫の三位一体
人形1体を三人で操る三位一体

そもそも文楽とは、三味線と太夫の義太夫節、人形遣いが一体となって行う人形浄瑠璃芝居のこと。幕が開くと三味線が鳴り、太夫の義太夫節が朗々と響き、息が吹き込まれたかのように人形が動き出す。人形を操るのは頭と右手を担当する「主遣い」、左手と小道具を担当する「左遣い」、足を担当する「足遣い」の3人による共同作業。生身の人間のように感情豊かに動かすには高度な技術が必要で、「足10年、左15年、かしらは一生の修業」と言われている。
夫婦の情愛を描いた「壷坂霊験記(つぼさかれいげんき)」などでは、義太夫が夫婦の心情を語り、三味線が時にはしっとり、時には切なく、また激しく奏でる。そして人形遣いがあうんの呼吸で身振りと表情を与え、喜怒哀楽をきめ細やかに演じる。観客も一気に物語の世界に引き込まれていく。

ONE PIECE×清和文楽 超馴鹿船出冬桜

一流の製作者らが集結して
ONE PIECEの世界観を文楽に

さて、夏の定期公演の目玉となる「超馴鹿船出冬桜」だ。清和文楽館は熊本地震で建物被害こそなかったが、風評被害による観客減やその後のコロナの影響、そして人吉球磨地方の大水害も少なからず影響を及ぼした。その中で復興を目指す作品として、尾田栄一郎氏の「ONE PIECE」を題材にした新作制作が進められた。
集英社の監修の下、四代目猿之助の「スーパー歌舞伎Ⅱ ONE PIECE」などを手がける劇作家・演出家の横内謙介氏が脚本・演出を担当。音楽は尺八奏者で「和楽器の貴公子」と呼ばれる藤原道山氏、人形浄瑠璃監修は淡路人形協会淡路人形座、人形衣装監修・人形振付は同じく淡路人形協会淡路人形座の吉田史興氏。そしてルフィやヒルルク、くれはの人形を人形師であり阿波木偶作家協会会長の甘利洋一郎氏が手がけた。

ONE PIECE×清和文楽 超馴鹿船出冬桜

また、熊本の伝統工芸も生かされている。ゴーイングメリー号は山鹿市の伝統工芸「山鹿灯籠」で作られている。制作は山鹿灯籠師の中村潤弥氏だ。その他美術・3Dアートなどで最先端の制作者らが集結した。
物語は「ドラム王国(冬島)編」。麦わらの一味がアラバスタ王国に向かう航海中、ナミが高熱で倒れてしまう。医者を探すためドラム王国に降り立ち、雪深い山の頂上に住むDr.くれはを目指す。道中様々な障害を乗り越え、力尽きたルフィ達を救ったのは弟子の青鼻のトナカイ・チョッパーだった。医者であり、ヒトヒトの実の能力者でもあるチョッパーをルフィは仲間に引き入れようとするが、そこに極悪国王ワポルの影が迫っていた…。
青鼻のトナカイと化け物扱いされてきたチョッパーが恩人ヒルルクの意志を継ぎ、ルフィと共に大活躍する。因みに「トナカイ」を漢字で書けば「馴鹿」。超トナカイのチョッパーを見事に表したタイトルだ。ぜひ、物語の続きを清和文楽館で。公演日等詳しくは特設サイト、チケット予約はライブポケットで。

料金 高校生以上 3,500円、小中学生2,500円

清和文楽館
熊本県上益城郡山都町大平152
0967-82-3001
営業時間 9:00~16:30
休館日 火曜日(祝日の場合営業)
アクセス 九州自動車道御船ICから国道445号経由、国道218号で約60分
清和文楽館公式サイト

※掲載されている情報や写真は最新の情報とは限りません。必ずご自身で事前にご確認の上、ご利用ください。

清和文楽館のONE PIECEコラボ新作人形浄瑠璃をご紹介しました。ぜひ、清和文楽館でご覧ください。