海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!

 佐世保港は明治に海軍港として開けた。旧日本海軍の拠点「鎮守府」が国内4か所に置かれ、その一つが佐世保だったからだ。今も海上自衛隊基地、米海軍基地があり、港町佐世保は「海軍さんの港まち」を自負する。そんな佐世保港ならではの体験が軍港クルーズだ!

いざ、乗船!いざ、旧海軍の海へ出航!

海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!

 SASEBO軍港クルーズは土日祝日の運航で1日1便。予約は1か月前から受け付け、佐世保港の鯨瀬ターミナルから出航する。同ターミナルはJR佐世保駅のすぐ裏手にあり、チケットは駅構内の佐世保観光情報センターで乗船30分前まで発券する。その意味では列車で佐世保駅まで行き、チケット購入をして鯨瀬ターミナルへというのがスムーズかもしれない。
 出航は11時30分。1日1便だから時間厳守しないとアウトだ。(現に乗り遅れてしまった外国人観光客を発見!)。関東・関西エリアからも訪れ、男子学生の「自衛艦押し」グループも。因みに佐世保港以外でも旧海軍の鎮守府が置かれた横須賀・舞鶴・呉でこうした旧海軍ゆかりの港クルーズが行われている。これらを回ってくる艦船好きもいるようだ。すおこうしているうちに、出航時間に。「お待たせしました。これより出航いたします」。ガイドさんの高らかな声と共に、クルーズ船が「ゴン、グン」と鈍い音を立てたと思うと海面を滑り出した。さあ、いよいよ艦船巡りのクルーズがスタート!

海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!
海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!

目の前にいきなり護衛艦!のっけから大興奮!

海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!

 クルーズ船は船着き場を出るやすぐに海上を右折。と、すぐに前方に海上自衛隊の護衛艦が見えてきた。早くも乗船客は艦隊に目が釘付けになる。灰色の巨大な船体が静かに、しかし無言の威力を放っている。「本日港内に停泊している護衛艦は」とガイドさんが説明してくれる。護衛艦それぞれの特長、スペック等をよどみなくスラスラと解説。護衛艦に詳しくなくても思わず「ほう、なるほど」と聞き入ってしまう。乗船客はカメラやスマホを懸命に護衛艦船体に向ける。艦船の甲板にいる自衛隊員に手を振ると、手を振り返してくれる。因みに写真の「いせ」はヘリコプター搭載型護衛艦。

海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!

 佐世保港は佐世保川を挟んで鯨瀬ターミナルのすぐ左後ろが「米海軍佐世保基地」。「ジュリエット・ベイスン」と呼ばれる平瀬係船池、「インディア・ベイスン」と呼ばれる立神係船池を擁し、その2つの間にある立神岸壁に海上自衛隊の護衛艦が停泊している。そして立神係船池の左側一帯を佐世保重工業(SSK)が占める。そして立神岸壁の向かい側に海上自衛隊の倉島岸壁がある。そのため、海上自衛隊艦艇と米海軍艦艇を同時に見ることができるのだ。米軍佐世保基地司令部もあり、クルーズ船からも日の丸と星条旗、そして国連旗が上がっているのが見える。その間には半旗の黒い弔旗も。戦争で亡くなった兵士への追悼旗だという。
 「ほら、今日は米海軍の『ニューオーリンズ』が停まっていますよ。しかもハッチを開放しているのが見えます。滅多に見られませんよ」とガイドさん。同艦船はドック型輸送揚陸艦で水陸両用作戦のために水陸両用車や上陸舟艇をハッチ内に搭載するという。その威容に「すげー」と声が上がる。同艦は2019年から米軍佐世保基地に配備されている。米兵たちもこちらに手を振り返してくれる。やはりフレンドリーだ。

海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!

 「ニューオーリンズ」の右側に薄い緑色のクレーンが見える。実はこれは佐世保重工業の「ジャイアント・カンチレバー・クレーン」だ。大正2年(1913)に旧海軍工廠(こうしょう)に設置された英国製250トンクレーンであり、世界遺産の「明治日本の産業革命遺産」と日本遺産の「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴」の構成遺産に選定されている。112年を経た今も蒸気タービンや大型船舶用プロペラの船積みに使用されているという。世界最古の現役の巨人だ。艦艇の雄姿もそうだが、こういう歴史遺産まで見られることに感動してしまう。

海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!

海上クルーズだけが見られる秘密のトリビア

海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!

 佐世保港内は離島への足となる一般客線や遊漁船が入出港するが、ガイドさんの話によると港内での釣りは禁止されているという。そして日米地位協定により立ち入り禁止・航行規制の制限水域が8割ある。米軍の弾薬補給所や貯油所を、この軍港クルーズではガイドさんの説明を聞きながら「見る」ことができる。海岸に「赤崎貯油所旧地下重油漕」もその一つ。旧日本海軍が所有し、戦後は米軍所有となっている。緑に覆われた小高い丘の地下に18万3000キロリットルもの重油が収まっているという。
 クルーズ船は外海に出る手前でUターンし、復路に向けて航行する。岸辺には海上自衛隊の施設群が点在する。海上自衛隊佐世保教育隊の岸には訓練用カッターが浮かび、ガイドさんによると猛訓練を新人隊員たちが受けているとか。その先に行くと海上自衛隊太田燃料庫、さらに米海兵隊弾薬庫が並ぶ。海上からしか眺められない貴重な施設群だ。
 そしてクルーズの終わりは倉島岸壁。ここにも海上自衛隊の艦船がずらりと並んでいる。しかもクルーズ船は掃海艦や護衛艦のすぐそばまで接近してくれるではないか!おお、大迫力!生憎写真には収めていないが、 2022年から就役している最新型護衛艦「もがみ」にも出合えた。日によって遭遇する艦艇は異なるが、間近で見る巨大な艦艇にはワクワクさせられると実感。2025年は3月1日から運航開始だ(冬期は休航)。

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軍港クルーズの後は海軍さんのグルメ

海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!

 軍港クルーズは約1時間で12時30分頃に帰港となる。時間的にもランチタイム。佐世保は海軍さんのまちだけに、やはり海軍ゆかりのグルメを推したい。海軍は船中での生活が長いため、毎週金曜日にカレーを食べて日付感覚を保つというのは有名な話。佐世保では海軍カレーを提供する店も多く、また海上自衛隊と協力した護衛艦カレーのレトルトカレーシリーズも。
 また、海軍シチューも人気のメニュー。海軍大将東郷平八郎が好んだというのがビーフシチューだ。佐世保のレストランやホテルなどでは「海軍さんのビーフシチュー」を提供。じっくりと煮込んでホロホロの口どけのビーフ、深い味わいのデミグラスソースが舌を喜ばせてくれる。そしてデザートの甘味は「海軍さんの入港ぜんざい」で。旧日本海軍時代、帰港前夜に母港へ無事に帰還できることを祝って「ぜんざい」が振る舞われたという。夏場は冷たいぜんざいを出す店もあるというので、ぜひ。

海軍さんの港まち・佐世保で軍港クルーズ!
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SASEBO軍港クルーズ

乗船券予約・発行 佐世保観光情報センター
所在地 佐世保市三浦町21-1(JR佐世保駅構内)
電話 0956-22-6630
料金 中学生以上2,500円・小学生1,250円
※未就学児は大人1名につき1名無料、2人目から小人料金
※身体・知的・精神障碍者割引 大人(中学生以上)1,250円 小人(小学生)630円
※第1種身体・知的障碍者及び第1級精神障碍者の介護者については、5割引2,500円
出航日 土日祝日 11:30出航
【運休の目安】
① 風速10m以上 ②波高1m以上 ③視程500m以下
SASBO軍港クルーズサイトページ

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