帆足家本家 富春館

450年の歴史を今に伝える、未来に残す。
文化の香りと憩いの場帆足本家富春館へ。

 大分自動車道大分光吉インターから国道10号を南に下って10分ほど、国道から住宅地へそれた中に、豪壮な酒蔵跡が佇む。それが帆足本家酒造蔵だ。周辺は旧街道筋の戸次(へつぎ)本町であり、帆足家が庄屋としても納めてきた地。街並み自体も国道10号の様相とはまるで異なる。15代当主夫妻が旧家を食と文化のサロンとして訪れる人々を迎え入れる。

 

大造り酒屋と文人墨客の文化サロン

 帆足家は約2000坪もの広大な敷地を有する。昭和47年に酒造を廃業し、酒蔵は大分市に寄贈保存されているが、敷地内の母屋、蔵も往時のままの姿を見せる。帆足家がこの戸次に居を構えたのが1568年、つまり450年近い歴史があるが、その由来はさらにさかのぼって12世紀という家系を誇る。大友氏との主従関係を結び、この地で農業の傍ら酒造家として大成。江戸時代に入ると臼杵藩主稲葉氏の庄屋も兼ねたという。

 

 
帆足酒造の酒蔵跡。現在は大分市に寄贈されているが、内部の見学可。
母屋の庭。華美を競う庭ではなく、ありのままの中に趣を見出すことができる
 

 帆足家15代の帆足耕一郎・めぐみ夫妻が里帰りし、この帆足家の保存活用を始めたのは2000年3月。総支配人を務めるめぐみさんは「開かずの家に風を通し、新たな商売を始めるか考えた時、衣食住のこだわりのものを置きたかった」という。その思い入れは「富春館」の名を持つ母屋の歴史に関係している。
 「富春館」は慶応元年、即ち1863年の建築。玄関は藩主の駕篭を寄せる「式台」を備え、帆足家が商家でありながら武家の構えを許されたことを物語る。その以前から文人画の田能村竹田(たのむらちくでん)ら、数多くの文人墨客が出入りし、江戸時代の文化パトロン、文化サロン的存在だったという。実際、田能村竹田らの作品を収蔵(現在は大半を大分市美術館に委託)し、帆足家からも文人画家が出ている。
 

 
母屋「富春館」のギャラリー。広間には実は伊藤博文の書も架かっている 
客間や三代前の当主の隠居部屋もギャラリーに
 

 ここを現代の文化サロンとすべく、めぐみさんが全国の作家たちの作品を選りすぐり、販売も兼ねた展示を行う。「ガラス器、陶磁器、手織物、染色物など、生活の中の『用の美』のあるもの、自然素材の手仕事の温かさを伝えます」。こうして平均年20回以上、全国の作家作品を入れ替えて展示している。
 

 

自然治癒力を高める、本来あるべき食を

 さて、めぐみさんは「食」へのこだわりも随所に見せる。正門向かいの蔵は食品を販売する「LIFE&DELI富春館」。みそ、醤油、もろみ漬けなどの発酵食品を地元のみならず、各地から取り寄せている。「体に良い発酵食品を」という思いからだ。ここでは耕一郎さんが穏やかな口調で接客し、味見もさせてくれる。また、戸次の特産品である「戸次(べっき)ごぼう」で作ったクッキーなどのオリジナル菓子も。
 

 
「LIFE&DELI富春館」の外観。今も往時の面影を残す旧街道筋にふさわしい佇まい。
菓子処「一楽庵」のショーケース。季節ごとに変わる和菓子も楽しみの一つ
 

 実は酒の出荷に使った蔵を改造した菓子処「一楽庵」もあり、小ぢんまりとした店先に和菓子が品よく並んでいる。珍しいれんこん餅は定番商品。しっとりと滑らかで、プルルンとした葛餅のような口当たりは女性好みだ。手土産にしても喜ばれる。その隣の西洋館は「レストラン 桃花流水」。大正5年(1916年)に建造された帆足家唯一の洋館であり、規模は小さいながら古き良き時代の面影を伝えている。ここでは戸次ごぼうをメイン素材にした「ごぼう弁当」を。ごぼうの天ぷら、ごぼうの筑前煮、ごぼうのキッシュなどが二段重ねの重箱に盛られている。ドレッシングなどは自家製だという。米は国東半島の黒米・赤米・緑米・香り米の雑穀米。
 「ごぼうと発酵食品、無農薬、減農薬のオーガニックなど、元気の素です。今こそ免疫力を自ら高める食べ物が必要なのでは」とめぐみさん。調理も当然、鰹節と昆布で出汁をしっかり取るなど、日本の本来的な調理法を大切にする。
 気づけば思いのほか長居してしまっている。しかし、それは心地よさ故。帆足本家富春館は大人の旅にふさわしい場所だ。

 
ごぼう弁当(税別1800円)は要予約。クコの実とわさびを載せているのはごぼう豆腐。
洋館二階窓からの眺め。通常は洋館二階は公開していない。
 

帆足本家富春館

大分県大分市中戸次4381
097-597-0002
営業時間 菓子処10:00~17:00、レストラン11:00~15:00、ギャラリー・土産処11:00~17:00
定休日 月曜・火曜(祝日は営業)
https://www.hoashi-honke.com/

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