光と影が綾なす美・大川組子

日本家屋の美を再発見できる町
家具の町大川市

 福岡県大川市は日本一の家具生産髙を誇り、「家具の町」と称される。その歴史は500年近い。長い歴史は優れた家具・建具職人らを生み出し、高い技術を継承している。その中で注目したいのが組子細工の「大川組子」である。手間と神経のいる手作業をものともしない職人たち美意識が現れた伝統技術だ。

大川組子の襖

家具の町大川で
唯一の組子職人

 組子とは小さな木片にほぞ穴(切れ込み)を入れ、釘や接着剤を使わずにいくつも組み合わせて幾何学的な紋様を作り上げていく技法だ。衝立や扉、障子、欄間などの建具に用いられる。組子細工は飛鳥時代に神社仏閣の建築技法の一つとして中国から伝来。江戸時代に大きく発展し、植物などをモチーフにした200種以上の組子模様が編み出された。組子細工の職人は全国各地に存在し、それぞれの地域名をつけた組子が作られるようになった。
 大川市で組子が始まったのは約300年前からという。以来、全国の組子職人が住居環境の洋風化を受けて数を減らす中で、「家具の町」の大川市は組子細工の技が途絶えることなく継承されている。他所は県に一人か二人の組子職人がいる程度だが、大川市には組子を作れる職人が集まっている。そのため切磋琢磨して技術の向上を図る土壌があるという。
 

木下正人作業風景
 
木下正人 組子作り
 

 特にJR九州の豪華列車「ななつ星」の客車内装に「大川組子」が採用されたことで、大きな脚光を浴びた。手がけたのは「木下木芸」の木下正人さんら。木下さんは大川市で組子を専業とする唯一の職人。実は他の職人は建具職と兼業で組子を作っているという。
 父も兄もやはり建具職人。「子供の頃から木屑で遊びよった」木下さんは、高校を出ると栃木県鹿沼市の建具職人の下で組子の修業をした。「技術というのは学校で学ぶものじゃない。職人から学ぶんですよ」という。とはいえ、組子技術を完全に習得するには最低10年は要する。「師匠の本物の組子を見た時、神様が作ったと思うほど感動した」。木下氏が組子専業に徹する原点である。

木下木芸ギャラリー
 
大川組子のランタン
 

繊細精緻な中に
強さと美しさを

 

 組子細工は5年以上乾燥させた桧や杉、ヒバなどの木材を約2㎜、あるいは1㎜以下の薄さに引いて割り、それに微妙な角度の溝・穴・ホゾ加工を施す。溝は百分の1㎜、時には千分の1㎜で切る。職人の長年の勘を必要とするところだ。この溝に同様の薄さに切った部材をさらに鉋や鋸、ノミ等で調節しながら1本1本組付けていく。地組の中に紙一枚の隙間もないように組み込み、図柄を作っていくのだ。細かいところから組み立てて、多い時は数万個の部品で組込む。糊は一切使わない。
 こうしてできた組子細工は、見た目は華奢だが容易には壊れない頑丈さがある。繊細精緻な組子を作るのは細かな手作業でしょうと言葉をかけると、片手をさっと広げて見せた。大きくて武骨な手。しかし、その手には芯の通った強さと美しさがある。そう、まるで組子細工のように。
 繊細な組子のランプシェードを押しながら「一つ一つの木片が互いに支え合っているから、組子はとても強い」という。それと同じことなのだろう。ななつ星の仕事は同じ大川の業者9社と組み、「チーム大川の技を出しきった」と胸を張る。
木下木芸公式サイト 

 

 
組子模様
 
大川組子建具接写
 

千分の一ミリの世界が
綾をなす組子の美

 「仁田原建具製作所」は建具制作と組子を手がける。二代目の万さん、進一さん兄弟、そして進一さんの息子の辰宏さん、進二さん兄弟。さらに進一さんの妻である由紀さんも組子作りに加わる。親子家族で技術を継承する希少な存在だ。進一さんは「大川の匠」にも認定されている。
  組子模様は正三角形を組み合わせる「三つ組手」を基本に、二百種以上あるという。神社仏閣に用いられる「本籠目」、魔よけの意味がある「麻の葉」、縁起物の「亀甲」、「面取り菱卍(ルビひしまんじ)くずし」など。また、用いる木材によっても色が異なる。黄色のヒバ、茶色の杉、朴の青、桧の白。天然の色が組子に淡い彩りを添える。
 さて、組子や彫刻建具は注文品であり、職人の元に残るわけではない。そのため、観光客が目にするのは難しい。大川市では観光体験プログラムとして工房見学や組子作り体験を紹介している。そして「仁田原建具製作所」では、一般観光客などの組子体験を受け入れている。小さな組み立てキットを使用し、組子を作ることでその魅力が伝わる。
 生活様式が変わり、住まいの西洋化で目にする機会や受注が激減している組子細工や彫刻建具。日本家屋に住むとことは小さな美術館に住むことだったかもしれない。せめてそれを知る機会が増えてほしい。
仁田原建具製作所公式サイト 

 
組子のほぞ
 
仁田原建具製作所の組子
 

大川組子の詳細はこちら

大川伝統工芸振興会
住所:福岡県大川市大字郷原483-8(大川産業会館 隣り)
電話: 0944-87-0035
営業時間: 8:30~17:15
定休日: 毎週土・日曜日、祭日
大川伝統工芸振興会公式サイト 

 

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