本坊酒造マルス津貫蒸溜所

焼酎王国・鹿児島に世界最高評価を受けたウイスキーを造るメーカーがある。
平成28年、創業の地に開設された蒸溜所で生まれた原酒は
静かな石蔵の中で熟成を重ねながら世に出る日を待ちわびている。

世界を目指す、南国で産まれた琥珀色の一滴
冬の時代を耐え抜いたジャパニーズウイスキーが世界の頂点へ

 日本三大砂丘の1つ吹上浜がある南さつま市。その山あいの地、津貫(つぬき)で製綿業などを営んでいた本坊家が、焼酎造りを始めたのが明治42年(1909年)のこと。良質な水に恵まれたこの地は古くから焼酎製造が盛んで、戦前には多くの石蔵が建ち並び、本坊酒造の敷地内には材料運搬や出荷用の専用鉄道線までもが引き込まれていたという。現在残っている石蔵のほとんどは戦後に建て直されたものだが、今でもその中に焼酎が貯蔵され、じっくりと味にまるみを帯びながら熟成の時を待ち続けている。
 本坊酒造がウイスキーの将来性に着目し、蒸溜を開始したのが昭和24年(1949年)。ジャパニーズウイスキーの父・竹鶴政孝を見いだした岩井喜一郎の指導の下、マルスウイスキーを誕生させた。伝統あるスコッチウイスキー造りに忠実に、それを超えるべく、ウイスキー造りに情熱を注いできた。

 
石蔵樽貯蔵庫で熟成されるマルスウイスキーの原酒。ウイスキー蒸溜直後は透明で、木樽に詰めて長期熟成されることによって琥珀色に変化していく。木樽の大きさやタイプによってその風味も違いが出るという
ウイスキーのポットスティル(蒸溜釜)。蒸溜所ごとに釜の形状や冷却器のタイプが異なり、それぞれ異なる味わいのウイスキーを抽出できる
工場見学で最初に案内される旧蒸溜塔。内部には巨大な焼酎の連続式蒸溜機が保存されており、本坊酒造の歴史を解説するパネルも展示されている
工場見学の後は試飲もできる(有料)。津貫で蒸溜され熟成途中のものや、信州で蒸溜され津貫で熟成されたものなど多くの商品が揃っている
 

 本格的なウイスキー製造に取り組むため、鹿児島から山梨、信州へと生産拠点を移していったマルスウイスキーだが、酒税法改正での等級廃止により冬の時代を迎え、一時期蒸溜休止を余儀なくされた。しかしながら2009年頃から始まったハイボールブームでウイスキー需要が持ち直すと共に蒸溜再開。さらにウイスキーの世界的な品評会「ワールド・ウイスキー・アワード2013」で「マルスモルテージ3プラス25・28年」が世界最高賞を受賞する。冬の時代を耐え、熟成され続けたウイスキーが世界一になるという奇跡を起こしたのである。
 そして平成28年(2016年)、ここ津貫の地に九州最南端のウイスキー蒸溜所「マルス津貫蒸溜所」が完成。実に32年ぶりに鹿児島でのウイスキー蒸溜が再開した。南国・鹿児島の気候は、冷涼な信州とはまた違った味わいをウイスキーにもたらす。特に津貫は盆地特有の激しい寒暖の差があり、そこで生まれた原酒の風味はマルスウイスキーに新たな表情を与えてくれるに違いない。

 
石蔵樽貯蔵庫。内部はひんやりとして、木の香りとウイスキーが醸し出すほのかな甘みを感じる香りで満たされている
試飲ができるCafe Bar&Shop本坊家旧邸「寶常(ほうじょう)」。本坊酒造二代目社長・本坊常吉の自宅を改装したものでアンティークのバーカウンターが設えられている
 

本坊酒造マルス津貫蒸溜所

鹿児島県南さつま市加世田津貫6594 
0993-55-2121
※工場見学は要予約(ホームページより申し込み)
アクセス 南薩縦貫道南九州川辺ICより30分
http://www.hombo.co.jp/

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